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新しく車を買いに来た中年とディーラーの話
※マニア向けフレーズあり

登場人物
◆A:客としてきた中年
◆B:ディーラーの若者


【配役】

A:♂
B:不問

所要時間:10分程度



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A「すいませーん」

B「いらっしゃいませー」

A「車買いに来たんだけど」

B「ありがとうございます。お探しの車種はどちらですか?」

A「あの~名前ド忘れしちゃったんだけど、最近CMでよくやってるじゃない
 遊び心満点っていう」

B「ああ、はい。」

A「それ欲しいなと思ってさ。」

B「ありがとうございます。それではこちらにお掛けください。」

A「はいどうも」

B「えー、オプションのご希望などはございますか?」

A「いや特には」

B「いまキャンペーン中でして、カーナビ・ドラレコ値引き中なんですよ。」

A「そうなんだ。でも俺車詳しくないんだよね」

B「あ、そうなんですか。でもそういった方も多いですしご安心ください。」

A「うん、いや実はね初めてなんだわ。マイカー買うの。」

B「そうでしたか。」

A「いやね、免許は取ったけど就職先が車の要らない地域だったもんでずーっと電車通勤でね。」

B「なるほど」

A「だから長らくペーパードライバーで」

B「はいはい」

A「その分車のことには疎くてさ。でも転勤でこっち来てみたら車ないととても生活できないじゃない」

B「この辺は確かにそうですよね。」

A「そんなわけでとりあえず通勤用に車ないと始まらねえだろってことで車買わなきゃなと思ったらさ
 ちょうどCM見て、あ、良さげなのあるんだなぁ~つって近所にこの店あったもんだから、来たのよ。」

B「そうでしたか。要約すると、とりあえず通勤用に車ないと始まらねえだろってことで車買わなきゃなと思ったら
 ちょうどCM見て、あ、良さげなのあるんだなぁ~つって近所にこの店がたまたまあったからご来店いただいたんですね」

A「…そうだけど。要約はできてないよね。」

B「うちは予約優先ではないので安心してください。」

A「要約、ね。」

B「あ、いまようやく理解しました。」

A「うるせえ。」

B「そうしますと、車に詳しくないということでしたら色で選ぶ方が多いですね。」

A「スルーしたな。あ、色ね。そういえば豊富なカラーバリエーションって言ってたよね。」

B「そうなんですよ。全部で108色ございます。」

A「波動球か!」

B「これも売りのひとつですから」

A「そうなんだ~。そうだなぁ、やっぱり初めて買うし、まっさらな気持ちでってことで白かな。」

B「お目が高いですね~」

A「そうかい?」

B「ええ、人気の色ですから。」

A「だよね。確かに無難といえば無難だけどあんまり人を選ばない色じゃない」

B「ええ」

A「ワイシャツなんかもそうだけどやっぱり清潔感の象徴みたいなとこあるじゃない。」

B「おっしゃるとおり!」

A「それにCMで走ってたのも白だしさ。自分が乗った時のイメージもしやすいし。」

B「そのとーり!!」

A「よし、白にしようかな。」

B「すみませ~ん、白は取り扱いないんですよ。」

A「なんで?!」

B「CMのは試作品なんで。」

A「試作品?」

B「いわゆる、プロトタイプですね。」

A「いや言い直せってんじゃなくてさ。」

B「はい?」

A「早く言えよ。」

B「はぁ…」

A「俺が最初に白がいいって言った時に、言えよ。なんだよここまでの無駄なやり取り。」

B「あ~すいません。」

A「まあ、ないなら仕方ないけどさ。え、売り切れ?」

B「いや、取り扱い自体ないんです。」

A「え、じゃあCMのやつは?」

B「大きな声じゃ言えませんけど白ってイメージ悪いじゃないですかぁ~?」

A「いやお前さっき人気の色って言ったよな?!」

B「やっぱり白=オフホワイトっていうイメージあるじゃないですか?」

A「ねえよ!」

B「だって明らかに踏み越えてるのに『一線越えてません』っていうアピールのイメージですよ?」

A「お前それ物凄くピンポイントな偏見だぞ?大丈夫?」

B「いま世間はそういうのに敏感ですからね。
  白を見ただけで『オフホワイトだわ!』なんて文字通り白い目で見てくる人も多いだろうという理由で
  実際のラインナップからは外れたんですよ。」

A「ちょっと上手いこと言った気になってんじゃねえよ。でもって何その個人攻撃としかいえない理由。」

B「他に好きな色はございますか?」

A「またスルーか。・・・他ね。そうだなぁ、ピンクとかも悪くないよね。」

B「あ、ピンクですか。」

A「いや、ピンクつってもビビッドなのじゃなくて薄いやつね。桜色っていうかサーモンピンクっていうか。」

B「ああ、サーモンピンクは人気ですね。」

A「確かに俺みたいな男がピンクって言うと変に思うかもしれないけどさ。
 ワイシャツのサーモンピンクだったら嫌味のない爽やかさもあるし、俺普段けっこう着てるのよ。」

B「ああ、なるほど。」

A「ビビットでも若い奴なら全然ありだけど、年を重ねてくると無理しかないじゃない?その点サーモンピンクなら
  中高年でもそこまで外れないし、けっこう好きな色なんだよね。」

B「おっしゃる通りですね。」

A「まぁ、ここだけの話さ、職場の女の子たちからもなかなかウケがいいんだよ。」

B「それはそれは。」

A「白いワイシャツの日は何もないけど、サーモンピンク着ていくと可愛いとか言われちゃったりなんかしてさ。」

B「確かにお似合いになりそうですね。」

A「だからおニューのシャツ買う時は意識的にピンク系統が増えちゃうよ。」

B「そのくらいの"あざとさ"も大事ですよね~。」

A「へっへっへっへ。」

B「へっへっへっへ。」

A「うん、じゃあピンクにしようかな。サーモンピンクで!」

B「すみませ~ん、サーモンピンクも売り切れなんですよ~。」

A「だから早く言えや!!」

B「あ、すいません。」

A「また無駄に語っちゃったじゃん。これは単に売り切れ?」

B「はい。人気の色ですので。」

A「あ、そう。じゃあ仕方ないか。」

B「デーモンピンクならあるんですが。」

A「デーモンピンク?!聞いたことねえけど。」

B「確かに珍しい色ではありますね。」

A「え、どんな色なの?」

B「ちょっと小悪魔的って言えばいいんですかねぇ」

A「余計わかんねえよ!女の子的な色?」

B「ギャルが好きそうな色ですかね~」

A「お前もよくわかってねえだろ!」

B「(小声で)もしかしたらほのかにエロいかもしれないですよ。」

A「イヤだわ!」

B「でもきっとお似合いになると思いますよ。」

A「いやいや、エロい色なんでしょ?そんなのに乗ってたらピンクのおじさんとか言われるじゃん。絶対卑猥な意味で。」

B「そうですかねぇ。」

A「転勤してきてそうそうピンクのおじさんはキツイわ。」

B「でもインパクトは抜群ですよ。よっ!ピンクのおじさん!」

A「林家ペーかっ!!」

B「えっ??」

A「あ、知らないの?まあいいや。他の色にしよう。赤系統はある?」

B「赤系でしたら、いま在庫ある中で一番売れ筋なのは…レッドシャドーですね。」

A「また聞いたことねえ名前だな。」

B「これはオススメですね。」

A「そうなの?」

B「はい。この間も忍者同好会というグループのお客様が4~5人でいらっしゃって、その色をご成約いただきました。」

A「忍者同好会?」

B「個性的な方々でしたよ。皆さんお揃いの赤いスカーフを巻かれていて…」

A「赤影だよそれ!忍者赤影のコスプレしたオッサン軍団じゃねえの」

B「はぁ…」

A「あ、ピンと来てないか。いや昔も昔ね、そういうテレビ番組があったのよ。」

B「そうなんですか。でもあれですよね、忍者なのに赤を身につけるって忍んでないですよね。忍びなれどもしの…」

A「そこらへんで止めとこうか。」

B「じゃ、レッドシャドーはやめておきますか?」

A「そうだね。俺そのおっさんたちと同列になっても話に付いてけねえわ。」

B「他に赤系統で在庫アリなのは…ワインレッドが残り僅かで…あとはサラブレッド、バイオレッドですね」

A「待て待て。後者2つはおかしいな。」

B「えっ?」

A「サラブレッドって馬に使われる言葉だよね。」

B「そういう使われ方もありますね。」

A「人間に使うとしたら一流とか優秀とか血筋が良いって意味でしょ?」

B「まさにそれです!」

A「つまり?」

B「まるで血のように鮮やかで綺麗な赤ですよ」

A「例えが最悪だ。却下。」

B「ではバイオレッドに?」

A「うん、それもおかしいな。バイオレットじゃなくて?バイオレットは紫だし赤系統に含めていい色じゃないでしょ。」

B「バイオ“レッド”ですよ」

A「どんな色だってば」

B「カタログから引用しますと、『バイオ粒子の燃える赤!』です。」

A「余計わからん。」

B「…」

A「どうしたの?」

B「いえ…そこは、バイオマンかっ!ってツッコミが来るのかと。」

A「バイオマンはバイオレッドじゃねえよ!レッドワンだよ!」

B「あっ…」

A「怒られるぞ。じゃあさ、他に在庫のある色は何があるの?」

B「そうですね…おかげさまで売れ行き好調につき、他にいま残っているのが…ええと…あと6色ですね」

A「少なっ!!108色あったのが6色!?」

B「はい、申し訳ありません。売れ行き好調ですので。」

A「絶好調なのね。とりあえず残ってる色の名前を教えてくれる?」

B「はい。ワインレッド、デーモンピンク、あとは・・・ダークネスオレンジ、ジェノサイドグリーン…」

A「え?え?ど、どんな色?ダークネス?ジェノサイド?」

B「はい。」

A「単語の意味わかってる?というか本当にそんな色あるの?」

B「私が命名したわけじゃありませんので。」

A「にしてもだ、ダークネスとオレンジってどんな組み合わせ?暗いの?明るいの?」

B「マンダリンオレンジ的な雰囲気ですね。」

A「絶対違うと思う!ジェノサイドグリーンに至っては想像すらできないんだけど!」

B「まぁ、言うなれば森羅万象を無に返す色ですかね。」

A「ねえ、日本語でお願いしていいかな!」

B「殺戮緑~」

A「そういうことじゃなくて!」

B「はぁ…」

A「こっちがはぁ~だわ。で、次は何?フランケン?デストロイ?」

B「カナシミブルーですね」

A「…急にKinkiっぽくなったな。」

B「え?」

A「ジェネレーションギャップか。」

B「すみません、世代じゃないんでちょっとわからないです。」

A「一昔前にそういう曲があったんだよ。」

B「もしかしてあれですか、青い風に吹かれながら走り続けたい~っていう」

A「違うしそっちの方が古い!ってかKinki知ってんじゃねえか!」

B「で、残り1色なんですが」

A「スルーしてきたな」

B「ブラックビスケッツですね」

A「このタイミング!ってか もはや色じゃねえ!」

B「え?」

A「いや。これで全部か」

B「はい。で、どの色にしますか?」

A「じゃあ、一番まともであろうワインレッドにするよ。」

B「ありがとうございます。実はワインレッドをお買い上げの方だけに付く特典があるんですよ。」

A「え、何かもらえるの?」

B「車に張るステッカーがありますよね?」

A「ああ、『Baby in car』とか『ドラレコ録画中』とか張ってる人いるね」

B「はい!そんな具合に張れるステッカーを差し上げています。」

A「どんなの?」

B「『Be My Baby』とか『ドラクエプレイ中』とか。」

A「『安全地帯』じゃないんかい!車ん中でドラクエって、危険地帯だよ!」

B「お気の毒ですが免許証は消えてしまいました。」

A「やかましい!」

B「更にもう一つ!」

A「なに?」

B「オーディオに最初から曲を入れさせていただきます!」

A「…まさかオイ……」

B「田園です。」

A「それ玉置ソロ!!」

B「じゃあ、愛のメモリー!」

A「しげる!」